ワインペアリングコンテスト 2021 オイスター部門特別協賛「いわがき春香」

さらに上の「安心・安全」のために。岩牡蠣養殖のパイオニアが続ける更なる進化

しばしばワインについて使われる言葉だが、その産物がはぐくまれる背景――気候、地理、土壌など、すべての環境をすべてくるめて「テロワール」という。このテロワールという言葉には、その産物の生産に関わる人びとの気質も含まれている。

「いわがき春香」は、このテロワールの賜物に他ならない。

岩牡蠣といえば天然ものだった時代に、誰も考えなかった養殖に取り組み、隠岐島の海士町というフィールドを岩牡蠣養殖の場として開拓し、さまざまな努力と研究を積み重ねて、比類ない美味しさを実現させた。

「美味しい!」と感動する味わいの背景には、それを生み出したテロワールがあり、物語がある。

いわがき春香のふるさと島根県隠岐島海士町

島根県隠岐島海士町 いわがき春香島根県の日本海沖およそ60㎞に位置する隠岐島は、古代より皇室や朝廷に海産物などを貢献する「御食つ国」(みけつくに)としてとして知られてきた。

現在もその美しい自然環境が保たれ、様々な海産物、農産物を生み出している。

この隠岐島は大小含めて180余りの島で構成されているが、「いわがき春香」はそのうちの島前三島のひとつ、中ノ島に位置する海士町の名産である。

はじめは穏やかな海士の内海で育てられる春香の稚貝は、ある程度成長して以降は、河川から遠く離れた外洋で育てられる。
外海は、生活排水の影響を受けないので、ノロウイルスや雑菌からのリスクを回避するには、この上なく理想的。しかし、波も荒く、天敵も多いというリスクがあり、かつ栄養分が少なく、成長に大変時間がかかる。

そもそも春香が養殖されているのは、保健所の指定により生食用牡蠣の出荷を許可された海域であるから、すでに安心・安全は担保されている。しかし、さらに春香はブランドとして独自の安全・衛生の管理基準を設け、加えて、海士町そのものが、「海と人とのかかわりをあらゆる方向から追求したまちづくり」を推進。美しい海を守り続ける取り組みをたゆまなく続けている。

一例を挙げれば、下水道の整備である。

海士町では、下水道普及率がほぼ100%。島根県本土で72.3%、広島県で75.8%という2019年のデータと比べると。この小さな自治体の数値の高さは驚きに値する。重要な産物である「いわがき春香」の生育環境を町ぐるみで守っているのだ。

「いわがき春香」はすべて生食用として出荷されているが、現在まで、岩牡蠣が原因と思われる健康被害は一度も発生していないのは、この美しい海の賜物なのである。

岩牡蠣養殖のパイオニアとして研鑽を続ける独自の研究・開発

「いわがき春香」は、品質向上のため、弛まなく努力を続けている。

岩牡蠣養殖のパイオニアとして、養殖手法や道具も独自に開発していることは、牡蠣業界でも有名だ。

たとえば種苗生産においては、これまでは帆立貝の殻に稚貝を付着させるのが一般的であった。しかし春香は、柔軟な樹脂製の「トレール」を選択。これによって、幼生同士が独立しやすくなって栄養が行きわたり、かつ採苗器から稚貝を剥がす便も良くなり、シングルシード(一粒牡蠣)として生育させることが可能になった。

また、外洋での養殖時には、個々の岩牡蠣が充分にプランクトンを取り込むことができるよう、牡蠣の養殖用に開発された「カイデライト」で、ロープの理想的な場所に固定。さらに、1日に6時間、太陽光を電源とするマイクロバブルを発生させるなどの工夫を凝らし、外海での成長率を10~20%向上させることに成功。

出荷にあたっては、育成海域、検査、健康被害発生時の対応など、全11項目の厳密な規格が設け、かつ随時見直しながら、より良い品質が志向し続けている。

生産・加工・流通まで厳密に管理された情報は、ラベルに記載された出荷コードをウェブページに入力するだけで、簡単にアクセス可能。こうした万全のホスピタリティーが認められ「いわがき春香」は、「美味しまね認証」において水産第一号認証を獲得している。

コクがあるのにすっきりとした岩牡蠣の真の旨さを追求

これまでは、真牡蠣の旬が冬であるのに対して、夏場の身入りが良い岩牡蠣は「夏が旬」だと考えられてきた。

しかし、年間を通して岩牡蠣の成分分析をしたところ、グルタミン酸が突出し、旨味成分が充実するのは3~5月であるということを発見したのが、いわがき春香のチームだった。

精細胞や卵細胞が成熟する夏場は確かに身入りは良くなるが、実際に香りや旨味が充実するのは、その寸前の季節。岩牡蠣は、味わいの美味しさと身入りのピークが少しずれている、ということが解ったのである。

つまり、岩牡蠣は、本当に食べて美味しいのは春だったのだ。

これまでの常識や既成の概念を取り外し、「本当に美味しい岩牡蠣を追求」することが、「いわがき春香」の出発点。

ゆえに「いわがき春香」は、生で出荷する期間を、本当に美味しい3~5月のわずか3ヶ月に絞った。

「いわがき春香」が育てられる外洋では、餌として存在するのは良質な植物性プランクトンのみ。ここで、たっぷりと2年半かけ自然な成長をうながされるため、岩牡蠣らしいコクをもちながら、雑味が少なく、すっきりとした味わいとなるのである。

3~5月以外は、細胞膜を傷つけないセルアライブシステム(CAS)冷凍で出荷。上殻を外したハーフシェルタイプだから、殻むきの面倒もなく、解凍も極めて簡単。いつでも、獲れたてとほとんど遜色ない旬の味わいが楽しめる。

隠岐島に持続可能な産業を!地域全体で取り組むサスティナブル

隠岐島は、8世紀の奈良時代から朝廷に海産物を献上してきた土地柄。また、島でありながら平地と湧水に恵まれ、古くから農業が盛んで、今も、漁業、農業といった一次産業が盛んだ。

この伝統を時代にしっかりと継承していくための動きも進んでいる。

海士町には高級ブランド牛、隠岐牛という名産がある。この隠岐牛の排泄物に、春香を磨いた際に出る牡蠣殻の残渣を混ぜて堆肥とし、「海士の本氣米」という米のブランドをつくりあげた。

畜産業、漁業、農業が、それぞれに連環し合い、持続可能なスタイルを構築し合っているのである。

こうした海士町の取り組みは、島全体のサステイナビリティを体現するもの。「いわがき春香」は、島の持続可能性の一翼を担う産業なのである。